朝日



 カーテンの隙間から朝日がさんさんと挿しこむ。
 あまりの眩しさに顔を顰めて寝がえりをうちかけた有馬は、次の瞬間、がばりと身を起こした。
「なんか変な夢見た」
 奏多が学生結婚する、と意気揚々と報告しに来た夢だった。目が覚めてよくよく考えると、おかしいことは明白なのだが、夢の中では話の流れに疑問を持つこともなく、むしろひどく納得している自分がいた。
 なにせ夢である。さらに、常日頃から何を言い出してもおかしくない奏多だった。やりかねないと言えばやりかねない。
 そういうこともあり得るかもしれない、と夢の中の彼は自然と思ったのだ。
「それにしても何でお父さん……」
 夢の内容を反芻しているうちに、げっそりと疲れてきて、有馬は再び布団に突っ伏した。
 ゼミの授業がはじまるまでにはまだ早い。寝なおしても充分間に合うだろう。
 カーテンの隙間から挿しこむ朝日は、彼をまどろみへいざなうには心地好い温度だった。

 その日、珍しくゼミに遅刻してしまった有馬は、友人の将にうっかり夢の内容をぼやいてしまい、「お父さん」「お父さん」と笑い混じりにさんざんからかわれることになった。



2013年 エイプリルフールおまけ