入れ替えっこ お菓子をください
前編冒頭 魔女子→愛花(four o'clock)
「あのぉ……お菓子、頂けませんでしょうか?」
黒のワンピースに、同じく黒の大きな帽子。
有馬は魔女の姿に勢いよく玄関の扉を閉めた。
バタンと響く音は容赦がない。
魔女もとい、魔女の衣装に身を包んでいる愛花は呆然としながらもう二度と開きそうにない扉を見た。しかし、数秒後には「正しい反応だよね」と自分の来ている服を見下ろして「うぅ」と呻いた。
黒いワンピースをちょいとつまんでみる。何処からどう見ても妖しい。不審者か、イベントの係、コスプレーヤーにしか見えないような格好だ。
「と言うか、これはさすがに恥ずかしすぎるんだけど」
愛花は黒のとんがり帽子を取り外すと、胸に抱いてくしゃりと潰す。
「まぁいっか、駄目だったって報告すればいいよね」
今思いついた言い訳をさらに後押しするように、愛花は「うん、それがいい」と大きく頷くと、そそくさと閉まった扉の前を立ち去ったのだった。
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