from ラピスラズリのかけら 2:ヴィエッダの歳って!?

4章16話『ヴィエッダ』 内の会話に含まれるはずだったモノ

「何と言うか……シェラ坊は相変わらずだねぇ。大丈夫よ、フィシュアちゃん。別に何も入ってなんかいないから」
「……いい加減、そのシェラ坊ってのやめろよな」
「何言ってるの、まだ200年ちょっとしか生きてない若造のくせして」
 コロコロと笑いながら告げたヴィエッダの言葉にフィシュアは首を傾げた。
「シェラートが若造って、一体ヴィエッダさんは何年生きていらっしゃるんですか?」
「おや、フィシュアちゃん、大人の女性に年齢を聞くのは反則だよ?」
 ヴィエッダは綺麗な弧を描いた口元に凄みを増させた。
「ヴィエッダは少なくとも700は超えてるぞ? 初めて会った時すでにジーニー(魔神)だったからな、その時点で500は超えてたってことだし、それから200年以上経ってるからな」
「ちょっと、シェラ坊! 何勝手に話してるんだ!!」
「別にいいだろう。ジジイと同じで、ヴィエッダがババアってことには変わりないんだから」
「何だってぇ!?」
 あれで、700歳を超えているのか。
 フィシュアは怒りも露わにシェラートを怒鳴り続けているヴィエッダを見た。顔をしかめていてでさえも美しさを損なうには至らないヴィエッダが700歳であるようにはとても見えない。どちらかと言うと、ヴィエッダの若々しさと妖艶さは義姉に近いものがある。
 まあ、シェラートも200歳すぎてるようには見えないけど。
 フィシュアはとても年寄りには見えないジン(魔人)とジーニー(魔神)の争いを不思議な気持ちで見守り、ただ黙って終わるのを待ったのだった。
 
 
 
Comment & ジン(魔人)とジーニー(魔神)についてのあれこれ
 
これは、4章16話中に入れるはずだったモノ。
ジーニー(魔神)というのは、ジン(魔人)が500年以上生きて初めてなれる存在ってのを強調したかったんですけど、なんだか、どんどんずれて行きそうだったのでボツ小屋行きとなりました。
 
一応、ジン(魔人)とジーニー(魔神)の関係についても補足しておきますね。長くなるので興味ある方のみどうぞ……
 
力関係は ジン(魔人)<ジーニー(魔神)
その為、位階はジーニー(魔神)の方が上です。
街で多くのジン(魔人)が暮らしているのは単に楽なのと、楽しいから。普通に人間と同じように暮らしている者が多かったりします。人間の友達も普通に居る。ただし、人間の方は彼らがジン(魔人)だと全く気付いていないことがほとんどです。
人嫌いなジン(魔人)は人里から離れて生活していますけどね。結構どっちでもいいわけです。
ジーニー(魔神)の場合は、街で暮らせないってことも無いんですが、長く生きている分、人間に対しての興味は失せかけていることが多いのと、初めて対する人間は彼らの威に当てられて恐怖するので、それがいちいち面倒だと思ってることも相まって、ほとんどが人里から離れて暮らしています。ただし、ジン(魔人)の時からつきあってる人間は割と大丈夫。でも、ジーニー(魔神)にしてみれば、人間はすぐ死んじゃいますからね。結局、人付き合いは、だんだんなくなっていくわけです。
神格化されているのもジーニー(魔神)の方が断然多いです。まあ、その分、暮らしている場所もわれていることも多いです。正確な場所まで人間に知られていることは少ないですが、大体の大まかな場所ですね。
ランジュールの場合は三の姫であったアジカを盗んで(さらって?)、しかも、手に入れちゃったことから居場所が有名になってしまいました。その後は普通にアジカがランジュールの住処を出入りしていましたしね。あと、人里からそんなに離れていない場所に二人が暮らしていたってのも理由の一つですけど。
 
ジン(魔人)はある時、ポッと生まれます。自然発生的な存在。陽の光と、風と、水と、大地の恵みによって存在するのです。で、赤ちゃんの時は力がないので形はとれません。風に揺られてたり、木に引っ掛かってたり、まだ空気みたいな存在。
形をとれるようになるのは10年くらい経ってで、言葉がしゃべれるようになったくらい。
 ジン(魔人)になって500年を過ぎたらジーニー(魔神)に変わります。手首の紋様も勝手に見えなくなります。(人間にとってはであって、ジン(魔人)とジーニー(魔神)には見えます。人間には見えない色に変わるって言った方が正確)
というか、年を追うごとに紋様はだんだん複雑になって行き、その後490年を過ぎたあたりから段々色が変わっていくのです。
 ジン(魔人)やジーニー(魔神)が死んだ場合は消えてなくなります。大気中に霧散して、生まれる前の自然の要素に分解されて自然の中に戻るのです。
 彼らが死ぬのは闘って殺されちゃった場合のみ(毒殺含む)。寿命はありません。ただ、彼らの存在の源が自然に依る為、環境破壊が起きちゃった場合は弱って、消えて行くでしょうね。今のところは、まだ大丈夫!
これらの点のほとんどはカルマール王国がある大陸にいる精霊と同じです。ただし、精霊にも位階はありますが、決まった年齢によって変化するというのはありません。こっちの場合は完全に力世界。歳が幼くても力ある精霊は上位にあたります。反対に弱いのはただ彷徨って、遊んでるだけ。意思はありますが、していることはジン(魔人)の赤ちゃん期となんら変わりありません。精霊も形をとることはできますが、あんまり好きではないようです。普段の彼らの姿を見ることができるのは、ソラリアのような素質がある人間のみ。こちらでいう霊感みたいな、生まれついての素質が必要なのです。なので、別に魔力を持ってなくても見える人間には見えます。すっごく稀ですが。
 
人間の願いを叶える件について。
基本、人間の願いを叶えてくれるのはジン(魔人)のみです。元々、人間の間で暮らしている者が多い為、彼らは人間を無視できないんです。情に流されたり、提示された利益に魅力を感じれば契約という形をとり、人間の願いを叶えます。また、ジン(魔人)にとってはそれが当り前という観念が定着しているので割と簡単に契約を結べたりします。どれだけ難解な願いを叶えたかをゲームみたいに競い合ってるジン(魔人)も中には存在します。まあ、実際のところは叶えるのが簡単だから、別に断る必要もないってのが大きな理由です。
ただ、ジン(魔人)自体を見つけるのが大変な為、人間達は割と簡単に願いが叶えてもらえるということ知りませんし、傷つけられるのではないかと思っているので畏怖を抱いている者も多いです。なので、どうしても切羽詰まった人間や、己の欲の為に願いを叶えたい人間だけがジン(魔人)を探すことになります。
結果として、実際に契約を結べる者は非常に稀なので、ジン(魔人)についてはあまり知られていません。
人間に知られていることとしては、契約を結べさえすれば願いが叶えられるということ、ジン(魔人)は契約者には逆らえないということ、ジン(魔人)は契約者に危害を与えられないということです。
これらが知られた理由はどんなに理不尽なことを頼んでもジン(魔人)が叶えてくれたことに由来します。また、契約者を傷つけないというのは、契約を結ぶ理由において、元々ジン(魔人)が契約者の人間性が好きだということ、また、提示された利益が魅力的だということがあります。好んでいる人間に害を加えたくはないし、利益重視の場合でも契約者が死んでしまったら利益が入らないという困った事態に陥るわけです。そういうわけで、ジン(魔人)は契約者に害を加えたり、ましてや殺すなんてことはしません。(できるとしたら、多少脅すくらいでしょうか?)
契約さえ結べば契約者に忠実な訳です。なので契約中の力関係は契約者の方が上になります。
そして、願いが叶えられた時点で契約解消となります。契約の続行はできません。勝手にジン(魔人)が動いて、叶えてくれる場合はありますけどね。契約解消後は全てジン(魔人)の気まぐれに依ります。
ジーニー(魔神)の場合は先にも述べた通り、人間に関心がないので、どうでもいい彼らの願いを叶えることさえ億劫なのです。なので、行っても人間は大抵あしらわれます。その前に、人間は強固な意志がない限り、己の願いを伝えることでさえ不可能です。ジーニー(魔神)の威には耐えられません。
つまり、契約は有り得ません。
異例中の異例であるシェラートの場合も、契約ではありませんでした。簡単にいえば願いの叶えっこ。なので、力関係は断然ランジュールの方が上です。シェラートは文句は言えたとしても、彼に逆らえません。まあ、ここら辺は『ラピスラズリのかけら』が終わり次第、番外編として出す予定なので、お待ちください。
 
 
うーん。こんな感じでしょうか?
 多分、『ラピスラズリのかけら』内で全ての設定を出すことはないと思いますが……
 もし何か、気になる点や疑問点があったらお尋ねください。現時点(4章16話)で、ランジュールとアジカに関すること以外なら、お答えできると思います。
 
 では、長々と読んでくださり、本当にありがとうございました!
 
 
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