子守歌


うたを歌う機械人形。
こじゃれた服を着せられて。
くるくる踊るよ舞い踊る。
壊れた機械ひびかせて。
螺子を絡めて掻き鳴らす。
ねぇねぇおいで、こっちにおいで。
ぼくはもうすぐ止まるから。
あなたの螺子を回すから。
代わりに歌ってちょうだいな。
あん子が来るの。来るんだよ。
ほらほらごらん、見て御覧。
あすこにパン屋が見えるでしょ。
むかいのあすこの坊やがね。
雨の日しくしくやって来るの。
きっと友達こないのね。
雨の日みんなこないのね。
たららんきかきかぎががって、
歌ってやってくれないかい。
あん子は笑うよ、きゃははって。
あたしの指がとれたのを。
爪付きたててもいだから。
見てよ、あたし、はげちゃった。
ほっぺが破けて溶けちゃった。
だけど、あん子はいいこだよ。
あたしに、髪の毛くれたもの。
まっくろ髪の毛くれたもの。
これでおめめが隠れるわ。
あん子にとられたあたしのおめめ。
しくしく雨の日とってって、
ぴかぴか晴れの日蹴ったのよ。
あたしのおめめを蹴ったのよ。
だけど見てよあたしのおめめ。
黒くて丸くてきれいでしょ。
あたしもひとつもらったの。
これで、お外がよく見える。
今日は、しくしく雨降りね。
あなたもよおく見てごらん。
あたしがあげたあん子のおめめ。
ほんとによぉく見えるでしょ。
うたってあげてあん子のために。
おめめのお礼に歌いましょ。
サヨナラサヨナラサヨウナラ。
向かいのパン屋はよく焦げた。
まっくろくろくろよく焦げた。