「   」


 木陰にいるのは、シビト
 
 おいでなさいな、と伸ばされた手に、
 逆らえずに手を伸ばし、
 逆らいながら首を振る。

 木の下にいるおんなのひとは、とても儚く、透き通っていて、
 まるで空気にうつっているかのようだったから。
 エミは、そのひとに少しだけ触ってみたくて。
 懐かしいそのひとに触れてみたくって。
 けれど、そのひとは、哀しそうに微笑ったから、エミは「いかないよ」と首を振った。