絶賛強制休暇中 おまけ



「ぐはっ……! やられたわ」

 引き返してきたホーリラは、握りつぶした手紙を片手に、寝台の端へ突っ伏した。
 母が手にしている手紙をルイチェが抜き取り、父へと渡す。
 何枚の紙にも渡る見慣れた字面を読みながら、ロシュは「ああ」と頷いた。
「やっぱりですか。さっきホークが見えたと思ったんですよね。会議が始まる前に、と書いて寄こしたんでしょう。さすが、私よりも付き合いが長いと言うだけあって、フィシュア様に完璧に行動が先読みされていたようですね、ホーリラ。一人で勝手に抜け駆けしようとするからですよ」
「う、うるさいっ……!」
「それにしても、計画表という名の命令ですか……」と、ロシュは、唸る。こうなってくると二人には、とても逆らうことができない。少なくとも、皇宮に足を踏み入れた時点で、命令違反となる。加えて、その場合は牢へ直行と明記されていた。
 つまり、牢の中で強制休暇か、普通に屋敷で強制休暇かの二者択一。
 ルイチェが、読めない文字の羅列を覗きこんで、ふむふむと頷く。
「そうだわ!」とホーリラが叫んで、寝台から、がばりと顔を上げた。
「ロシュが、蹴散らせば何とか皇宮に入れるじゃない!」
「少なくともあと十時間は安静にしているようにと言い含められているのですが」
「じゃあ、その後は!」
「無理とは言いませんが、その場合フィシュア様は完全無視を決め込むと思いますよ」
「ぅぐあああああああああ!」
 母の叫びに、ルイチェは耳を塞いだ。
 だが次いで、さめざめと嘆き始めた母の頭を、彼はぽむぽむと小さな手で撫でてやったのだ。