Freundschaft auf die offne Stirn,




 穂波ほなみは窺うように辺りを見上げた。
 頭上よりも高いところ、厚く折り重なっている枝葉が、よく晴れた真昼の空を閉ざしている。日の光が入る隙間のない山の中は、ひんやりと肌に絡みつき薄暗かった。
 ぎるるるる。ぎるるるる。時折、姿の見えない鳥の鳴き声が山の中を不気味に木霊する。その度に、穂波はびくりと肩を震わせた。
 おどおどと左右に目を泳がせば、ちょうど近くの木の枝に一羽の大きな黒鳥が舞い降りたところだった。翼を折りたたむ丁寧な所作に、穂波は数瞬見惚れる。そのうち、我にかえった彼女は、慌てて意識を足取りに戻した。
 穂波は出来る限り足を急かしながらも、爪先に力を込め、地を掴み掴み歩く。さもないと苔で覆い尽くされたこの山の地面は、いとも容易く少女の足を滑らせるのだ。実のところ、既に三度は転んだ穂波の衣は、もうぐっしょりと濡れ、これ以上泥のつく場所はないほど汚れていた。だからと言って、これ以上、転んで相手を呆れさせるのは得策ではない。
 穂波は情けなく眉を下げて、前を歩く一つ上の幼馴染の少年の背を縋り見た。
 山に入ったばかりの頃は、二人並んで歩いていたはずなのに、今では随分と間が開いてしまった。できるのなら走って追いついてしまいたいが、二人が歩いている道の幅は見た目ほど広くはない。
 道の向かって左半分は一見なだらかだが、確かな勾配をもって落ち込んでいる。うっかり足を滑らそうものなら崖下へ一直線だ。足場の悪いこの道で安易に走るなど、臆病な穂波には出来るはずもなかった。
大高おたか。ねぇ、ここどこ?」
 村に帰ろうと決めてから、もう随分と長い時間、山の中を歩いている。だと言うのに、見知った道はいつまでたっても現れない。それどころか、同じ場所を何度も巡っているように穂波には思えた。
 大高、と穂波は心細さに耐えきれず、もう一度呼びかける。
「迷ったの? ねぇ、迷っちゃったの?」
 気弱な声で問うたのが、気に触ったのかもしれない。目の前で、突然立ちどまった大高は、穂波を振り返るや恐ろしい顔をして睨んできた。
「嫌ならついてこなきゃよかったんだ」
 苦々し気に怒鳴られて、穂波はびくりと肩を跳ねさせた。
「ち、ちがうよ。そうじゃなくて」
 おどおどと大高を縋り見れば、彼は穂波から目線を外して溜息をつく。じわりと目頭から浮き出た涙を、穂波は服を握りしめて堪えた。
「ご、ごめんね」
「謝るなよ……」
 あぁもう、と大高は頭をぐしゃぐしゃと掻きまぜる。とうとうしゃくり出しはじめた穂波を見て、大高は自身も泣き出しそうになりながら顔を歪めた。深く息を吐き出して、彼は肩を落とす。
「……悪かった。こんなことになるんなら誘うんじゃなかった。ごめん」
 ほら、と大高は穂波に手を差し出す。
 穂波はぶんぶんと首を横に振った。何もせずに大高に任せ切っていたくせに、迷ったのを大高のせいにしてしまうような口ぶりになっていたことを穂波は今更ながら悔いる。胸がずきりと痛んだ。
「ごめんね」
 口の中で、もごもごと呟く。少し向こうで肩をすくめてみせた大高に、穂波は急いで涙を拭った。
 待ってくれている掌に向かって、穂波は歩を繰り出す。一歩踏み出せば、後は急くように足が勝手に動き出した。
「――ばっ!」
 踏みしめた土の上。足が滑ったことを自覚する前に、目先の大高が大きく傾ぐ。大高が叫ぶ声が遠くで聞こえた。穂波が息を吸うより早く、無理に身体を引き寄せられる。感じたのは、確かな熱と圧迫感。瞬間、穂波の視界は草色の布地に覆われた。



「いいものを見つけたんだ」
 そう言ったのは大高だった。穂波の手を引いて村の外れの垣根の下に座り込んだ大高は、周りに誰もいないことを確かめて、懐からそっと羽を取り出した。
 黒い鳥の羽。穂波がじっと魅入っていると、大高はおもむろに黒い大きな羽を太陽にかざした。穂波は息を呑む。目の前で、光を弾いて色が幾通りにも分かれた。しなやかな羽毛の重なりが、虹色に輝いている。
「どこで」
「山の奥の沢で見つけた。上から流れてきたんだと思う」
「沢?」
 山に沢があったなんて誰からも聞いたことがない。村の大人たちも知らない場所を大高は見つけたらしかった。沢、と穂波は呟いて、視線を羽に戻す。
 太陽の光の中で羽は煌めき、ほのやかに色を変えていた。一瞬たりとて、色はひとところに留まることはない。目を瞬く、その暇さえ惜しいと思わされる。
「やるよ」
 手に押し付けられた黒羽に、穂波は驚いて顔をあげた。いいの、と問うまでもない。穂波の表情を眺め、大高は誇らしげに口の端をあげた。
「また探せばいいから」
「また?」
「あぁ」
 穂波の顔が期待で輝く。
「……結構、遠いけど」
 穂波が頷くのは早かった。虚をつかれた大高は、「仕方がないなぁ」と穂波の前で肩を竦めたのだ。



 ぎるる。ぎるるるる、と気味の悪い鳴き声が木霊する。さっきまでは震えるほど近くで聞こえていたはずの鳴き声が、ひどく遠くから聞こえるように感じた。
 穂波は頭上を見上げる。なにやら霧がかかっているようで、頭がうまく回らない。遠いな、と思った。空を覆うほど茂っていた木が驚くくらい遠い。
「穂波」
 耳に届いた声がずきりと痛む頭を鋭く突いた。ぼんやりと頭上を見上げていた穂波は、しばらくしてからようやくそれが自分を呼ぶものであると気付いて、ゆるりと目線を下げる。
「痛むところは」
 穂波はぶんぶんと首を横に振る。
「そっか」
 ぜい、と荒んだ息を頼りなく吐き出し、少年は笑んだ。口の端をあげる、その見慣れた仕草に、穂波は顔を凍らせた。
「大高」
 咄嗟に地面についた傷だらけの左腕に激痛が走る。ともすれば気絶してしまいそうなほどに痛んだ。骨が折れている。眼前の状況とはかけ離れたところで、穂波は瞬間的に悟った。ぬかるむ土に血が混じっている。掻いた爪先に入り込んだ生温さに、穂波は嘔吐感を催した。
 大高の衣を染める血はおびただしかった。じわじわとその領地を広げるに飽き足らず、地面に流れ出している量から、傷の深さが嫌でも知れる。
「どこ」
「右肩」
 弱弱しい答えに、穂波は頷く。大高の衣のあわせを開いた彼女は、傷口の深さを見てえずいた。込みあげてきた胃酸を無理矢理飲み下し、穂波は手早く引き抜いた帯紐で、大高の肩から鎖骨にかけてを止血した。紐を結ぼうとして痛んだ手首に、穂波は悲鳴を噛み殺す。使えない左腕の分は沓で踏みつけて、紐を引っ張る右手に力を込めた。
 穂波は、ひっくとしゃくりあげた。浮き上がってきた涙を首を振って、振り払う。縫い目から噛みちぎった左袖を丸めて、穂波は、ぎゅうと大高の右肩に押し付けた。
「ちゃんと押さえて」
 首肯した大高の左手を取って、穂波は傷口に当てた布を押さえさせる。やわと当て布を押さえる幼馴染の手の上から、穂波は手を重ね押さえこんだ。
「助かった。これでいい」
 大高は息をつく。穂波はありったけの力で首を振った。
「止まらないっ!」
「いいから」
 穏やかに叱咤され、穂波は震える。
「道を探せ。だれか」
 ささめくように諭した大高は、相変わらずむずがる穂波を厭うように目を閉ざした。
 穂波は当て布に手を当てたまま、へたりと尻もちをつく。
 村への道を探して、誰かを呼んでくる。
 間に合うわけがない。帰り道が分からなくて迷っていたというのに。
 じわじわと血の沁み出す当て布から、穂波はそろりと手を離す。手を濡らす生温い血液に叫び出しそうだった。大高は目を開けない。尻をついたまま穂波はずるりと後ずさった。弾かれたように走り出す。
 どうすればいい。どうすれば。
 見上げれば、遥か上でさやりと鳴る葉が覆い重なっている。切り立つ崖は登ろうにも、見るからに柔らかく、足をかければ滑り落ちそうで登れない。
 戻れない。この高さを落ちたのだ、と実感して穂波はぞっとした。こうして自分がここに立っていられるのは、あの崖から大高がひたすら自分を庇ってくれたからに他ならなかった。
「た、助けて」
 走りがあまり得意でない穂波は聳える崖の脇を足をもつらせながら必死に走った。足がくぼみにはまるたびに、転びそうになる。崖と逆の方角に目を向けても、はやり木が広がるばかりだった。先に何があるのか、生い茂る木々が深すぎて予測もつかない。手で無理に掻きわけた下草の枝が弓なりにしなって弾き返る。鋭い枝にしたたかに背を打たれて、目から涙が零れ落ちた。
 息をするたび、肺が引き絞られるように痛む。前に出そうとした脚ががくがくと震えた。思わず木に手を伸ばした穂波は、幹に背を預けてずりずりとへたれこむ。乱れた息の音に混じって脈動が耳の奥で響く。目線を上げると、葉の隙間から空が透けて見えた。
 ぎるるるるる。ぎるる、ぎるる。
 聞こえてきた不気味な鳥の鳴き声に、穂波は震えあがる。頭を巡らせて辺りを見渡しても、それらしい鳥はいなかった。
「――誰かっ! 誰かいませんか」
 穂波は衿元を握りしめて、すすり泣く。言わなければよかった。こんな所に来たいなんて。穂波は後悔に顔を歪めて、懐から取り出した羽を力任せに振り上げる。
 ぴゅーい、と澄んだ鳥の声が、耳元を駆け抜けた。するり。追い抜かれざまに後方から吹き抜けた風に惹かれて、穂波は口を開けた。
 一度、穂波の目先で旋回してみせた首長の黒鳥は、豊かな翼を閃かせて木々の間を滑る。それを追うように流れる三股の長い尾は、木漏れ日に照らされきらきらと色を幾重にも弾いた。
 穂波はごくりと唾を飲みこむ。大高に貰った羽を握りしめたまま、彼女はおもむろに走り出した。
 呼ばれている。強く、そう感じた。
 その考えを後押しするように、しなやかに首を穂波へ巡らせた黒鳥は美しい声で鳴く。
 無造作に生えていた木々が、黒鳥が通るや脇へ避けて道を開いた。そうとしか穂波には思えなかった。ぐん、と勢いを増した鳥を、穂波は陶然となって追いかける。
 深い緑が重なり茂る垣根を踏み越え、降り注ぐ陽光のあまりの眩しさに穂波は目を覆った。
 濃く甘い匂いが、息するたびに入り込む。恐る恐る開けた目に映ったのは、辺り一帯に咲き乱れる花だった。
 穂波は呆然と花畑の端で立ちつくす。風が花間を巡るにあわせて、花畑は色鮮やかなわだちを広げていった。いつの間にか黒鳥はいなくなっている。
「来たね」
 背後から突然響いた声に驚いて、穂波はぱっと振り返る。声を失くした穂波に構わず、すらりとした渋色の衣を纏う男は涼しげな眼差しをして、彼女の右手を取った。穂波は右腕に走った痛みに顔を歪める。
「骨が折れている」
 淡々と指摘した男は、穂波の右腕にするりと人差し指を滑らせた。背筋を這いあがった異質な感覚に穂波は震えあがる。けれども、悪寒が収まると同時に、腕に疼いていたはずの鈍痛が掻き消えた。
 穂波は目を瞠り、手を掴む男を見上げる。男が穂波の手に合わせ身体を屈めると、長い紺髪がはらりと宙に滑った。手の甲に添えられた男の手の温度の低さは、空虚な現実味のなさをよけいに際立たせた。
「傷口に塗るといい。すぐに血は固まるだろう。それと、これは痛み止め」
 男は穂波の掌に、小さな陶瓶と布袋を順に乗せた。穂波は呆けたまま手渡された陶瓶と布袋を見つめる。
「羽を持っているね」
 断定するように問われ、穂波は戸惑いながらも素直に頷いた。黒羽を握りつぶしていた左手を男の眼前まで持ち上げる。
 つい、と男は穂波の手の内から黒羽を摘みとった。そのまま羽を下から上へ指先で擦り上げた彼は、目を細めると元の通り穂波の手の中へ黒羽を戻す。
「さあ、お帰り」
 空気を動かすように風は流れた。穂波が声をあげるよりも早く、周りの景色は揺らめきはじめる。花びらが巻き上がった。穂波は腕で目を覆う。ぐらりと身体が宙に浮いた気がした。足元がふらついて倒れ込む。穂波は湿った地面にしたたかに尻を打った。
 ぎるるる。ぎるるるる。木々を揺する不気味な鳥の声を耳にし、穂波はびくりと肩を跳ねさせた。
 少し向こうに横たわっている人影を見出した穂波は、弾かれたように地を蹴り、駆け寄った。
「大高!」
 薄く見開かれた両目にはもう力が入っていない。ただ、戻って来た彼女を責めるように眉間にうっすらと皺が刻まれるのを見て、穂波は唇を引き結んだ。大高の意見を無視して、彼女は手渡された陶瓶と布袋を地面に並べ置く。
 陶瓶は血止めの薬。布袋の中は痛み止め。
 紺髪の男は、そう言った。本当にそうで間違いがないのか確かめる猶予はもうない。
 血の気を失くした大高の顔は白く、歯を鳴らして震えている。触れるのをためらいそうになるほど恐ろしかった。
 穂波は陶瓶の中身に指を突っ込み、すりつぶされた薬草をほじくりだした。血を吸い込んだ当て布を捨てて、彼女は鼻につく薬草を傷口に塗布する。大高の呻き声に、彼女は身を震わせて薬を塗る手を止めた。それでも、大高が毒に苦しんでいるわけではないと知れると、穂波は胸をなでおろして残りの薬を全て塗り終える。額に滲んだ脂汗を手の甲で拭い、彼女は残っていたもう片方の袖を噛みちぎった。塗布した患部を布で覆って結ぶ。
 男が腕を治してくれたように、男がくれた薬が大高の傷口をすっかり塞いでくれるのではないかと期待していたのだが、どうやらそうではないらしい。相変わらず苦しげに細い息を繰り返す大高を見て、穂波は期待が外れたことに少なからず落胆した。それでも、血が止まっていることに深い安堵を覚える。患部を覆った布に染み出しているのは、薬草の色ばかりだ。
 地面から布袋を取り上げた穂波は、中に入っていた数枚の葉を取り出す。見たことのない葉だった。裏表共に艶やめいている丸い葉を、穂波は口に放り噛み下す。噛むたびに増す酸っぱい味に、穂波は口を曲げた。
「大高」
 穂波は噛んで柔らかくした葉を、震える大高の口へ指で押し込む。
「酸っぱいけど。きっと楽になるから」
 大高に頷く力は残っていないようだった。けれど、吐き出す気配もない。穂波は赤味の戻らない白い頬を両手で包む。熱を分け与えるように、彼の額に額を押し付けて目を瞑った。
 間に合って。助かって。どうか。神様。
 ぎゅっと瞑った目頭に力を込めて、穂波は祈る。
 ぴゅーい、ぴゅーい、と澄んだ鳥の音は、影ばかり落ちる山の冷たい空気を震わせた。地面に放り出されていた黒羽は、鳥の音に呼応するように光を帯びる。ささめく光を弾いて、二人を取り囲む風景はひそやかに姿を変えた。



 地点を定めた黒鳥は枝を弾き、一身に咲き誇る花たちの上を横切った。するりと彼の肩へ降り立った黒鳥は、たおやかな仕草で翼をたたんで口をきく。
「助かったよ、カセン。私じゃ村への道を開いてはあげられないからね。案内するにも間に合わないと思ったんだ」
 顔なじみの肩に手をついて、黒鳥はゆるやかに姿を変えた。羽と同じ黒い髪を右耳の後ろで結いあげている女は、花園の向こうに目を向けて緋色のまなこを和らげる。
「構わないよ、オリ。最近、世話をかけていたからね」
「本当だよ。女児用の衣を作れだなんて、何事かと思った。それに茶葉に、食材に、調理具だろう? 自分は必要ないくせによくやるよ」
 呆れたように息をついた織に、カセンは静かに笑んで、花の中を歩き出す。遅れて、織も彼の後に続いた。
 カセン、と彼女は躊躇しながらも、呼びかける。
「あの子を、どうするつもり?」
 困惑と非難を含んだ声。カセンは既知からの問いに、歩みを止めた。振り返れば、織は諦めたように見返してくる。花の合間から吹きすさんだ風に、紺の長い髪は細やかに流れた。
「君が歪めば、この場も歪む。迷い込んだだけの子をどうしてそうして呼び招く」
 織は苦しげに眉をひそめる。風に煽られ広がった鮮やかな衣の袖は翼そのもの。「ねぇ、カセン」と彼女は懇願するように呼びかける。
「人間の生は短いよ。そして驚くほどに脆い」
「それは経験に基づく意見?」
「あぁ」
 織は色褪せてゆく過去に心を痛めて自嘲する。
 もう数百年も前の話だった。足を怪我した黒鳥は、自分を助けてくれた恩人の男を愛した。数十日の後に空に放たれた鳥は、男が妻と添い、子どもをなし、やがて老いて死ぬ間際まで、ひそかに傍に添い続けたと言う。彼女の対である白鳥から、かつて聞き及んでいたことだった。遠い昔。もう面影すら抱いていないだろう彼の子孫を彼女は未だに見守り続ける。織が連れてきた彼女こそがそうであることを、カセンもまた知っていた。
「何も。するつもりはないよ。どうすることもできない」
「カセン。それでもあの子は。少なくともあの子はそうなってしまうよ」
 カセンは口をつぐんで、花を取り囲む垣根の外側へ意識を傾けた。織も気配に気付き、苦みを噛むように笑う。
「言った傍から道を開くかね、この男は」
 唇の両端を艶やかに吊り上げ、眉を跳ねさせた織はカセンのところへ大股で歩み寄ると「いつか後悔するよ」と彼の頤を引き掴んだ。
「それだって願うんだ。看病をしたばかりか、望みの衣まで与えてね。初めて君に心を割かせたほどの子だもの。少しでも多くの幸を残せることを祈ってる」
 諌めるように、織は彼の額に口付けて、颯爽と飛び立つ。
「カセン!」
 黒鳥は花園の上を滑り、風に乗って空高く舞い上がる。垣根を割って飛び出してきた少女を、カセンは目を細め迎えた。