そして、ここにも悩める求婚者その二が一人。


第四幕 蓬莱の玉の枝




「トゥーアナさんが言っていた蓬莱山の玉の枝ってどんな枝なのですか、カザリアさん」

 ロウリエは、ぽやっと舞台袖に向かって問いかけました……って!
 ――ちょ、ちょっと、待ちなさい、ロウリィ! それをこっちに聞かないでよ、私は、一応ナレーターなんだから。そのくらい自分で考えなさい!?
「そう言われましても、どんな枝かわからないのでは揃えようもありませんよ?」
 う……、それは、まぁ確かにそうなんだけれど。
「生憎僕は、どんな枝か聞かされていませんし」
 うーん。確か台本のどっかに書いてあったのは書いてあったんだけれど…………ああ、もうっ、面倒だわ! 教えればいいんでしょう、教えれば! ちょっと待っておきなさい、今調べるから。
「ええ、はい、助かります。ゆっくりでいいですからね、カザリアさん」


 ――分かったわ。銀の根、金の茎、白玉の実を持っている植物が蓬莱山の玉の枝のようよ。
「銀の根に、金の茎ですか……。豪華な植物もあったものですねぇ。そんな大層なもの、実在するんでしょうか」
 ロウリィは、ぽけぽけと感想を述べてから、礼を言う。
 そうして、彼は蓬莱山を目指して旅立った。ええ、ようやくね! 全く疲れるわ……!
 って、どうして速攻で帰ってきてるのよ!
「いえ、だって、ですねぇ、カザリアさん。そんな植物ないだろう、と思って細工師さんに作ってもらうためにお尋ねしてきたら、もうつくったからって、これを頂きました」
 うわぁ……! これって実物見るとすごいわね。どこもかしこも、きらきらじゃない。この白玉って、真珠?
「のようですね。そうおっしゃってましたし。はい、どうぞ、カザリアさん」
 いや、どうぞって……。これ持ってかないで、どうするのよ。
「と言われましても、僕は一応結婚していますしね、もう一度結婚するのもどうかと。つまり、これは特に必要ないのですが。カザリアさんは、こういったものも好きそうですし、よかったら差し上げます」
 ロウリィ……! ……一応って何よ、一応って! 一応な結婚相手でわるかったわねぇええええ!?
「ああああああ、痛いです! 首締ってますっ」
 うーるーさーいー! せっかく調べてあげた意味は何だったのよ! お陰で余計に疲れたじゃないの! ただでさえ、ずっと読みっぱなしで、声が枯れそうなのにっ!
「わわわ、すみません! けど、じゃあ、ちょっと休憩すればいいじゃないですか」
 はいっ!?

 
 

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