魔神ジーニーは、目の前に立つ男に言った。
「承知した。お前の願いは叶えてやろう」
 了承の言葉を受けて、人間の男が安堵の息をつく。男の緊張が解けゆくのと同時に、彼の表情に喜びの色が広がっていくのが魔神ジーニーには容易に見て取れた。
 魔神ジーニーは、口元が緩みそうになるのをぐっと堪える。この瞬間を待っていたのは、彼もまた同じだった。
 長年、待ち望んできた時が訪れた。間にあった。ようやくめぐり合えたのだ。
 この機会を逃すつもりなど、魔神ジーニーには毛頭ない。
「ただし、条件がある」
 魔神ジーニーは厳かに告げた。
 再び身を強張らせた男は、はっと顔を上げ、魔神ジーニーを見据える。
 魔神ジーニーはゆったりと目をすがめ、人間の男に語りかけた。
「なぁに、簡単なこと。ただ俺の願いも、お前に叶えてもらいたいだけだ」
 男にしてみれば、魔神ジーニーの提案は予想だにしなかったものだったのだろう。緊張で硬直したままの男は、思案するように押し黙った。
 しかし、それも一瞬のこと。男の双眸に宿る強い決心を覆すようなものではない。
 そうして、人間の男は魔神ジーニーに問う。
 魔神ジーニーには、自然と溢れ出てしまう笑みをこれ以上押し留めることなどできなかった。

「あなたの願いとは……?」